第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
そんなセツナの一瞬の気の緩みを、カカシが見逃すはずなどなかった。
私が瞬きをする程度の間に。カカシはセツナとの距離を詰めていたのだ。
不意を突かれたかたちとなったセツナは、咄嗟に私の喉元に突きつけていた苦無でカカシの猛攻を防ぐ!
私は久し振りに大きく息を吸う。
しかし息をつく暇などなかった。ついに恐れていた事態に陥ってしまった。
カカシとセツナが、直接ぶつかってしまう。
『……っ、待っ…』
どちらに、何と声をかけていいのか分からない。
自分の為に命懸けで戦ってくれている者。
復讐に取り憑かれ、実兄の仇を今まさに討たんとする者。
私には何も出来ず、ここで見ている事しか…
なんと情けなくて、歯がゆいのだろう。
「悪いが、アンタに負ける気は全くしない」
セツナは、オールバックの髪を額から後ろに流すように撫で付けた。
「…やってみなきゃ分からないでしょ」
カカシが言い終わるや否や、目にも留まらぬスピードで印を結び。影分身を作り出す。
どちらが本物か、見た目では全く分からない。見た目だけで言えば、ニ対一の構図だ。
そこから、目にもとまらぬ攻防が始まった。
この広い部屋の中でも、二人からしてみれば戦場としては狭いくらいなのだろう。
左隅で戦っていたと思えば、今度は右奥の方でぶつかっている。
しかし、やはり二人分の攻撃を捌ききれなくなったセツナは。やがてカカシに捕まってしまうのだった。
ついには羽交い締めにされてしまう。そしてもう一人のカカシがトドメをさす為、手に電気を集めた。
そして、分身の自分ごとセツナの体を貫いた。