第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
俺は、ほぼ無意識でミナトに飛びかかっていた。
しかしそれは簡単に阻止された。隣に立っていた、はたけカカシによって。
「………」
情けなく地面へと押さえ込まれている俺を、黙って見下ろすミナトに叫んだ。
「なん、だよ…なんだよそれ!!
任務を遂行する為に、俺の兄貴を犠牲にしたってのか!?
殺した…って、そんな、簡単に言いやがって…!
兄貴は…シュンはな!お前等の事が大好きだったんだぞ!そんな、そんな大好きな友に…殺されたなんて…
どんな…気持ちだったか…俺には、想像も、つかね…」
最初は、出来る限りの声を張り上げて。威勢良く怒号を発していた俺だったが。
次第に声が出なくなって。喉に声が張り付いて。
自分が泣いてるって気付いた。
「セツナ」
俺を押さえつけるカカシが、初めて口を開いた。
「今回の事は、先生だけの判断じゃない。俺も同じ場にいて、手を貸した。
シュンに手を下したのは…俺達二人だ」
そこからは、二人とどんな言葉を交わしたとか。どうやって家に帰ったとか。ほとんど俺の記憶に残っていない。
兄貴と二人で過ごした家で、ただ抜け殻のように息をしていただけだった。しばらくは。
そして、俺が感情を取り戻した日それは。
波風ミナトの、四代目火影就任式だった。
全国民から暖かい拍手が送られて、壇上で笑って手を振る奴を見た時俺は決めた。
お前ら二人を、絶対に許さない。
絶対に復讐をしてやる。
そして、
任務の為、御国の為なら仲間の犠牲も厭わないという。この木ノ葉里の掟。それも俺の中ではただの腐った論理だった。
全部、そんなものは俺が壊してやる。
倒すべき仇の晴れ姿の日に
俺は一人、木ノ葉を出た。