第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
カカシとミナトの二人と共に任務地に赴く事は、少なくなかった。
その度に兄貴は、頼りにされて嬉しいと。喜んで出掛けて行った。
だから、見送った時はいつもの光景に過ぎなかったのに…。
イレギュラーが起きたのは、俺がシュンを見送ってから数日が経った頃だった。
「おいセツナ」
声をかけて来たのは、同期の忍だった。
任務中だと言うのに。持ち場を離れて無駄話をしに来たらしい。
まぁ今回の任務は、切迫した状況でも危険度の高いものではないのだが。
「たしかお前の兄貴、今ここ…いるんだよな」
そいつが地図上に指を置いたその場所は、間違いなくシュンが今赴いている戦地に違いなかった。
「…戦況、かなりヤバイらしいぞ」
何を、馬鹿な事をと思った。
今までだって、どれだけ危機的状況にあってもあの三人が揃って戦地に出向けば。必ずといっていいほど勝利に導いて来た。
今回だって…いつも通り、三人揃って帰ってくるに違いない。
そんな風に楽観視する俺を、最悪な出来事が襲った。
突然、俺の “ 能力が開花 ” したのだ。
時任一族のその能力は、強力過ぎるあまり 一族の中のたった一人にしか発現しないとされている。
まるで一族中の人間の力が、その一人に集約される。と表現しても決して大袈裟ではない。
そしてこの事実は門外不出。知る者は今では俺と兄貴だけとなっていた。
言うまでもなく、現在の能力保持者は兄である時任シュン。だったはず。
しかしその能力が
今、俺に現れたという事は…
俺の背中を、冷たい汗が伝った。
そしてその二日後…
帰って来たのは、案の定二人だけだった。
事のあらましを聞く為に、すぐさま俺は二人に詰め寄った。そこで、
耳を疑う事実を聞かされた。
「……は?今…何て言った?」
「シュンは俺が殺した」
それが。時期、火影と言われる男の口から発せられた言葉だった。
「…任務遂行の為には、シュンには死んでもらわなければならなくなった。
だから殺した。ただそれだけの事だ」
頭の中が、脳みそが焼けるみたいに熱くなった。
こいつは、この男は何を言っている?