第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と

「いいぞ。揃ってくな…俺の復讐劇を完遂するに必要なピースが」

『…っ、お願い、教えて。誰が、来たの？』

心の底から嬉しそうに、彼は笑った。

「そうか…お前には分からねぇのか…。全く感じねぇのか。
この、奴の怒りに満ちたチャクラを。

最高に愉快だ！なぁ…アゲハ？」

突然話を振られたアゲハの方に、私は思わず振り返ってしまう。

すると…

「………はい。最高、です。本当に…っ」

あぁ…貴女は。
例え、それが敵同士という関係性になってしまったとしても。
彼の瞳に映り続ける事を選んだのか。

彼女のおかげで、ここに誰が来たのか分かった。

間違いなく、カカシだ。


それが分かった瞬間、全身の血が沸騰する思いだった。

私のせいで彼の身が危険さらされ、命が危ぶまれている事への申し訳ない気持ち。

自分自身の身よりも、おそらく里よりも、私一人の身柄を優先させた事への怒り。

しかし…そんな中に、恥ずかしいくらい身勝手な感情が芽生えてしまった事を私は否定出来ない。

たった一人で、こんなところまで、助けに来てくれた事が…
どうしようもなく、嬉しい。


「どうやら、デマじゃなかったみてーだな。

アンタが自覚してねぇだけで、奴にとってお前は…
特別な人間だったってわけだ」

また彼は、嬉しそうに犬歯を覗かせた。


アゲハの体が、電気に触れたようにピクンと跳ねた。

「…四階まで来ました」

「みたいだな。コウとサキじゃ、ある程度の足止めにしかならねぇ事は分かってる。

来る…もうすぐ来るぞ。奴が。ここに」