第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と
この部屋に放置されて、もう随分と時間が経ったように思う。窓がないこの建物では、もはや昼も夜も分からない。
相変わらず身動きが取れないままで。最悪の事態ばかりが頭に浮かぶ。
もし、もしもだ。カカシとミナトがここに現れ。私が人質に取られているばかりに本来の力を発揮出来ずに…、彼等に…
いやありえない。私の為に他里に乗り込んでくるなど…火影やエリート忍者のする事ではない。
その時、唐突に扉が開かれた。
扉からは。今までよりも一層冷たい表情のシュンが現れた。そして、当然のように玉座へと腰掛ける。
「…お前、ずっと知りたがってたな」
『何か…教えてくれるの?』
「もう、終幕が近いからな」
終幕?と、私が口にする前に彼は続けた。
「復讐」
ぞくりと身が震える一言だった。
「俺はこの五年間、この復讐を遂げる事だけを支えに生きてきた」
部屋に、コウとサキ、そしてアゲハの三人が入ってきた。
「コウは母親を。サキは恋人を。木ノ葉の忍に殺された。
それぞれ、あそこには怨みを持ってる。
そして…俺は…」
再び扉が激しく開かれる。
「時任様!!きっ、来ました!!や、奴が!この黒の塔に侵入しました!!
現在、二階にて複数の忍と交戦中です!」
連絡係の忍だろうか。息も絶え絶えに彼に伝える。
それよりも。
来た…?来たって、まさか、
「…やっぱり、来たか」
シュンはニヤリと笑った。
「時任様。我等も出ます。手筈通り、四階にて待ち受けます」
「あぁ。分かってるとは思うが、間違っても殺すなよ」
「心得ております。
出来る限り手傷を負わせ、可能な限りチャクラを消耗させる。それ以上の事は致しません」
背中でそう語りながら。サキとコウは部屋を出る為に歩き出す。
『まっ…待って! だ、め』
彼等を、なんとかして止めたい。しかし、私なんかが、彼等に何と声をかけられるだろう。
肉親やそれに等しい人を殺されて…
復讐なんて止めろ?
私には…簡単にそんな事言えない。