第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と
一階から二階へ 階段を使って上がる。
二階へ着く。ガランとした空間が広がっており、三階への階段は部屋の一番遠い位置にあった。
そして三階へ。そして、四階へと向かう階段はまたしてもここから対角線上。一番遠い場所に位置しているのだった。
まるで、来訪者を簡単に五階まで到達させまい。そんな目的の為に建てられた建物みたいだと思った。
やはり五階が最上階のようで、着くなりシュンは私を下ろした。
「部屋に繋いどけ」
「は」
返事をしたのは、コウと呼ばれている男だった。
私は彼に引きずるように歩かされる。そして廊下を渡り。ある部屋に連れてこられた。
そこにはベットが一台と、小さなテーブルと椅子がワンセット置かれている。壁はコンクリートの打ちっぱなしで、部屋を無機質で冷たい印象に見せていた。
私は鎖のついた手錠をかけられた。その鎖が繋がれている先は、ベットの足。
私の行動範囲は、簡単に見積もって直径で二メートルくらいだろうか。
『あっ、待って!お願い…シュンと話をさせて欲しい』
「…大人しくしていろ…」
自らの主人を呼び捨てにされたからか、彼の顔には嫌悪感が張り付いた。
そして、無情にも無言のまま扉を閉められてしまった。その後、ガチャリと施錠音が部屋に静かに響いたのだった。
『……』
改めて部屋を見渡す。
捕虜を閉じ込め、拘束しておくには部屋がかなり広い。もっと牢屋の様場所に入れられるものだと思っていた。
『どうして…どうして、こんな事に』
私の独り言には、勿論誰も何も返して来てはくれなかった。
私は今日からこの部屋で、一体どれくらいの時間を過ごす事になるのだろうか。
それに私はいつか、シュン達の目的を知る事は出来るのだろうか…。