第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と
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シュンが宣言していた通り、木ノ葉の里を出てから約二日で。そこに到着した。
ここは…どこだろう。
相変わらずシュンの背中から降ろされる事を許されない私は、そこからキョロキョロと観察した。
どうやら、どこかの里のようだが。
木ノ葉里とは随分違う…。
全体的に、建物が質素な感じだ。二階建ての建物すら数えるほどしか無くて、素材もコンクリートではなく木が多い。
もっと言えば、建っているのは家ですらなくテントも数多く見受けられる。
はた。と思い出す。
チラっとだが聞いたことがある。火の国の近くに新しく創設された里があると。
もしかすると、こここそがその新里…
そしてずっと気になっていた事がある。
彼等の額当てだ。私が見慣れているのは、三角とぐるぐるうずまきがセットで描かれた木ノ葉里のシンボル。
しかし、彼らの額当てにはマークは描かれていない。本来記される部分が削られて無印なのである。
それがなんだか、彼等には名前が無いみたいで無機質で、悲しかった。
「おかえりなさいませ。時任様」
「お疲れ様です。時任様」
街ですれ違う人たち全員が、順番に彼に頭を垂れる。
人口もやはり木ノ葉に比べてかなり少ないが、全員が全員シュンに敬意を表しているのだ。
『…シュン、貴方はここの偉い人なの?』
彼に無礼な口をきくと、周りの人間から攻撃を受けるので。私は出来るだけ小声で聞いた。
「…どうだかな」
彼もまた、小さな声ではぐらかした。
街の中心部。そこに、それは悠然と建っていた。
明らかに周りとは大きさも空気感も違う、細長い高層の建造物。
構造とは言っても、五階くらいだろうか?
その建物は、冷たさを孕んだ真っ黒な色で。窓が一つもない重苦しい見た目の塔だった。