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モノクローム【NARUTO】

第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と




大切…大切に決まっている。そんな薄っぺらい言葉で言い表す事に嫌悪さえ抱くくらいに。


あぁ、
これは…報いなのだろうか。

忍のくせに、自分以上に大切な存在を作ってしまった事への。

俺はまた、失うのだろうか。その大切な物を。そう考えるだけで、柄にもなく足が震えた。


自分の中の感情がぐちゃぐちゃだ。


彼女をこちらの世界に巻き込んだ “ 奴 ” への怒り。

彼女を失うかもしれないという恐怖。

不甲斐ない自分への情け無さ。


俺は頭を左右に振る。

今はグダグダと考えるのは無しだ。

エリを無事に取り戻す事だけ考えろ。

敵陣へ乗り込んだ際の策を考えろ。
道中仕掛けられているかもしれないトラップへの警戒を怠るな。
そして、早く。早く走る事だけをしろ。


「カカシ…拙者達は運が悪いな」

「え?」

「雨だ…」

言われて初めて気が付いた。たしかに、これは雨の匂いだ。

「…もう数分で降ってくるね」

雨は、現場に残る匂いを洗い流してしまう。しかし。今はそんな事くらいで追跡を止める選択肢は持ち合わせていない。

「パックン、ここまでで構わない。ありがとう」

ルートは把握している。パックンで匂いを追えなくても、里へ辿り着けない事はない。多少トラップに気付くのが遅れるくらいだろう。

それに、ここからは長い戦いになる事が予想される。少しでもチャクラを温存しておくに越した事はない。


俺は心配顔の彼を、術の解除で引っ込めた。

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