第3章 猫と秋刀魚と、涙と笑顔と
「サスケ、いたか?」
「いや。家の中にはいない」
珍しく、この男が焦っている。いつもの冷静沈着ぶりが嘘のようだ。
「早く探しに行くぞ」
「…おい、アンタ過保護過ぎるんじゃないか?
別に子供じゃないんだ。すぐ戻るだろう」
この時は、なぜコイツがこんなに焦っているのか考えもしなかった。もちろん理由など知る由もない。
「すぐ戻る?…エリは、このまま戻らないかも知れない」
「は?他に行くあてなんか」
「あぁ。行くあてなんかないだろうな。
それでも、ここには帰ってこないかも知れない。
どこにも…帰らないかも知れないんだ。
お前に、この意味は 分かるか?」
なんだよ。その言い方。それはまるで…
アイツが死ぬ。みたいな言い方。
考えうる一番嫌な考えが頭をよぎって。改めてカカシの顔を見る。
「…早く、見つけて連れ戻すんだ」
「おい、どういう…」
どういう意味だ?アイツは死にたがっているのか?そんな話は俺にはしていないじゃないか。
もう、聞きたい事は山ほどあった。しかし、それはカカシにじゃない。
俺は、直接本人に聞きたいんだ。
一刻も早く見つけ出して、今俺の中にある疑問 全部アイツにぶつけてやる。
俺とカカシは、各々違う方向へと駆け出した。