第3章 猫と秋刀魚と、涙と笑顔と
この辺りは、街とは反対側で明かりらしい明かりがない。
こっちに来ていなければいい。そう思って探しに来た。しかし、その期待は見事に打ち砕かれた。
「エリ!」
『!!』
姿を見つけた瞬間、叫んでいた。
『サスケ君…』
思わず頭の上から、足元まで。ゆっくりと無事を確認するかのように視線を這わせる。
「…こんなところで…何してるんだ」
声に、全面に安心感が溢れ出している。
自分にもこんなにも情けない声が出せるのかと。それはもう呆れてしまうくらいに。
『ごめんなさい、猫を追って来たら。帰れなくなってしまって…。もっと周りを見ながら走ればよかったんだけど、夢中で…
本当にごめん、心配かけたかな』
「!心配…」
かけたかな。ではない。
こっちは、どんな思いで!
思わず手を伸ばして、彼女の腕を掴み…
自分がどんな思いで探していたかを言い聞かせてやろうとしたのだが。
『っ、…』
エリに触れようとした気配をいち早く察知した彼女は、ピクリと反射的に体を震わせて俺を拒否したから。
なんとも言えない気持ちになる。
「…とりあえず、帰る」
俺は額当てを外し、その布端を自分で持ち。もう片方の布端を彼女に渡す。
「…暗いから、転ばれでもしたら困る。
触られるのが嫌なら、これでも持ってろ」
『…ありがとう』
彼女は俺の提案を受け入れ。
おずおずと額当てに手を伸ばした。