第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と
既に、彼らの言う裏ルートに入ったのだろうか。
私がそう感じた理由として、彼等の警戒の色が少しだけ落ち着いた事が挙げられる。
雨が降って来たという事もあって、私と彼等は洞窟の中でしばしの休息を取っていた。
薄暗い洞窟の一番奥の方に位置するところに居場所を与えられた私は。
一人膝を抱えて考えを巡らせる。
『……っ、』
サスケは大丈夫なのか。もし、怪我では済まない程の傷を負わされていたとしたら…
アゲハは本当に木ノ葉を抜けてしまったのか?だとすれば、やはりカカシとの事が原因?
そして。私如きを人質にして、彼等は一体誰を誘き出そうというのか。
自然に考えて、私と接点の濃い…カカシか。それともミナトか。
いや どちらにしても、私とは釣り合うはずもない人達だ。
それに彼等は里の誉ともいえる存在。
私という個人の為に、動いてもいい人物では、決してない。
しかし、たしかにシュンは言っていた。上手く釣ってくれよと…。
もはや、私に人質としての価値があるかどうかなど。どうでもよかった。願うのはただ一つ。
どうか、どうか…
『誰も…来ないで』
「意外だな。お前でもそんな悲壮感に満ちた顔すんのか」
ジャリ。と砂を踏む音と共に現れたのは。
またもシュンその人だった。
『…その元凶が、何言ってるの』
私は溜息混じりに吐き捨てた。そんな拒絶を物ともせず。彼は私の隣に、どかりと腰を下ろしてしまう。
「悲痛な顔はしてるのに…。お前の顔からは、恐怖の色はほとんどねーな。
怖くないのか?クソ弱い一般人のくせに、こんなふうに拉致されて」
彼のグリーンの瞳を真っ直ぐに見返して、私は答える。
『…拉致監禁は、初めてじゃないから』