第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
「あの、風邪だって聞いて…お見舞いに///」
林檎を持ったイルカが、部屋に入って来た。
なんでも、アカデミーの昼休憩中にわざわざ出向いてくれたらしい。
『イルカ先生…ありがとうございます。それに今日のお約束の打ち合わせも…』
「そんな事!全然大丈夫ですよ!俺は、
貴女が笑ってくれてたらそれで安心ですから。
それ以外は、別にどうでもいいです…早く良くなって下さいね」
『……イルカ先生』
こんなにも優しい見舞いの言葉が、あるのだ。
素直に嬉しいし、正直驚いてしまった。
「はい。あーん」
『……』
見ると、カカシが粥を乗せたスプーンをこちらに突き出している。
「あ…お、俺キッチン借りて林檎剥いて来ますね!」
イルカが部屋を出ても、カカシは虚ろな目をしてこちらを見ている。
私は知っている。こういう顔をしている彼はとても頑固で。自分の目的が貫徹されるまで諦めないのだ。
「あーーん…」
こちらが折れる他ない。
私は諦めて、自らの口を開けてお粥を迎え入れたのだった。
『ん…、美味しい。です』
「君の料理に比べたら、全然だけどね。
そう言ってもらえて良かった」
カカシに食事の介護をしてもらって、茶碗一杯分くらいのお粥を平らげた。
するとキッチンからイルカが、綺麗に剥かれた林檎を持って部屋に帰って来た。
『わ、ウサギさんカット…イルカ先生、やっぱり分かってくれてますね』
「いや、…あの、その…
はい!どうぞ!///」
イルカは私の顔の真ん前に、竹串に刺さった林檎を突き出した。