第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
「なにも忍は、忍術や幻術だけで攻撃してくるわけじゃねぇ。
こうやって体術で襲って来た場合、アンタに何が出来る?
それに…」
シカマルの大きな手の平が、私の視界を完全に塞ぐ。
「こんなふうに、目を覆われちまったら。もうゲームオーバーだろ。
アンタには、力も、速さも、知識も、経験も何もない。何も、ねーんだ。
あるのは、その初見殺しの瞳だけ。相手がその瞳の特徴を知っていた時点で、もう
詰みだ」
自意識過剰かも知れない。でも、彼の目が言っている気がした。
アンタには、死んで欲しくない。
この厳しく辛い世界に、簡単に踏み込んで来て欲しくないのだと。
「仮に…他の里の人間に、アンタのこの瞳の事が知れたとするだろ…
下手したら、戦争になるぜ」
『…せん、そう』
私はただシカマルを見上げて、そう呟く事しか出来なかった。
「…もし、手練れの忍がエリの目を持っていたとすれば。それは脅威だ。
だからこそ、各国が奪い合う事態になりかねねぇんだよ。
…捕まれば、目玉をくり抜いて移植されるか。
それとも血継限界を目的に、子供を量産させられるかもな」
『…っ、』
私は彼が述べた、あまりにも恐ろしい言葉の数々に体が震えた。
シカマルが喉元で苦無を構えている事など忘れて、彼の腕部分の袖を無意識でギュッと握る。
「!!悪い…また」怖がらせた…
シカマルが、クナイを捨て去ると。
カランカランと乾いた音が転がった。
そして、気が付いたら彼の腕に抱かれていた。