第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
私とシカマルの視線が交わって。
おそらく三秒程が経過したくらいだと思う。
「っ、」
シカマルの表情が少し歪む。
その瞬間、かくんと私の体が唐突に解放された。
『あ…うん、動く』
私は体の自由がきくようになったのを確かめるように、自分の掌を見つめながら、開いたり閉じたりを繰り返した。
「確認なんだが…アンタは忍としての訓練は一切受けていない。だよな?」
『う、うん』
「術を破ったり、特別な能力を持ってる。なんてこともねーな?」
『ないない!そんなの!さ、さっきからなに?
なんか怖い質問ばっかり…』
私は、彼が結局何を言いたいのか、理解する事が出来なくてつい結論を急いでしまう。
「…俺の考えじゃ、アンタのその目。
エリの瞳には、術破りの力が備わってる」
『……いや、いやいや、まさか…
だって私、チャクラすら全く無いような人間なんだよ?』
「…だからこそ、かもな。
さしずめ、破術の瞳…とでもしとくか」
『そ、それって、どうなの?珍しい力なの?
別にあれでしょ?大した事じゃないんでしょ?よくある能力で、ありふれてる力…みたいな』
そうじゃない事は、彼の今の様子を見ていれば一目瞭然だったのだが。
私は突然突き付けられた現実を受け止めきれず、まくし立てるように言葉を吐いた。
「よくある能力…、ありふれてる?いやアンタ、馬鹿言うなよ…
俺はそんなもんは、見た事も聞いた事もねー。
ハッキリ言って、俺ら術者にすりゃ脅威だ。
まだそれがどの程度の物なのか分からないが、チート級の能力だぜ?
どんな術すらも解いて、無効化出来る。なんて話だったら…ヤベーどころの話じゃなくなる」