第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
『火あったかいなぁ…あ、見て見てシカマル君。四匹も釣れたんだよ』
「あぁ…」
『…お腹空いてない?魚焼いちゃう?』
「あぁ…」
『……シカマル君は、世界一男前だよね』
「あぁ…」
駄目だこの人。私の話を一切聞いていない。
一体こんなに真剣に、何を考え込んでいるのだろうか。
改めて、思考に耽るシカマルの顔を見る。
本当に真剣で、しかもその顔はどんどんと暗い表情になっているような気さえしてくる。
私までどんどんと不安になってくる。
本当に…彼はどうしてしまったのだろう。
いや、もしかして。落ち着いている場合ではないくらい、私は何かヤバイ、のか??
「エリ。ちょっとだけ、今から俺に付き合ってくれるか?」
長い時間の後、彼はやっと口を開いた。
彼が私の名前を呼ぶのは珍しい。というか、
もしかしてシカマルに名前を呼ばれるのは初めてではないだろうか。
なんの根拠もないが、そんな事が私の中の畏れを増幅させた。
「目ぇ瞑ってくれ」
『うん、』
私は言われるがまま、瞳を閉じる。
するとその少し後、また体の自由がきかなくなる感覚があった。
おそらくまた、影真似の術で縛られているのだと分かる。
ゆっくりと、腕を上げたり。首を左右に動かしたり。まるで術がしっかりと私にかかっているか確かめるように。シカマルは私の体を操った。
そして、次の指示が飛んだ。
「よし…じゃぁゆっくり目を開けて、俺の目を見ろ」
『…うん』
私は言われた通りに、出来るだけゆっくりと瞼を開いて
彼の瞳を見つめた。