第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
バッテラの言葉が脳裏に浮かんだ。
“ 冬眠明けの、熊が目撃されてる ”
『ま、まさか…』
嫌な汗が背中を伝う。
草を掻き分けるようなガサガサという音は、こちらに近付いてきている気がする。
そして、ついに
草陰から、それが姿を現した!
『っ!!』
私は咄嗟に後ろに下がった。
すぐ後ろが、川だという事も忘れて。
『わ、わわっ!!』落ちるっ
「バッ!っ、影真似の術!」
完全に岩から落ちて、川にドボン!と落ちるイメージしか出来なかったのだが…
私の体は石化したように固まって動かない。
「…あぶねーな。アンタ何してんだ」
私は空を見上げる形のままで時が止まっていた。
『その声…シカマル君?!』
そう名を呼び、なんとか視線だけ彼の方へ向ける。
体は硬直したように動かなかったが、眼球だけはなんとか自由がきいた。
そのおかげで、やっと彼の姿を確認する事が出来た。
「俺がいなきゃ、完全にずぶ濡れだったな」
『シカマル君がいなきゃ、川に落ちそうになる事もなかったけどね…』
胸の前で、両手を組んでいる彼と目が合う。
目が合った……
のだが。
「っっ?!」
『え!?ちょ、待っ』
まるで魔法が急に解けたかのように、私の体はぐらついた。そして…
どぼん!
と、私は川に真っ逆さま。
「今、な…なにが、起こった…
って、そんな事より今は。
おい!大丈夫か!?」
『…ずぶ濡れだよ』うん