第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
私はいつもの釣り場に到着。
大きな岩の上が、私のお気に入りのポイントだ。
ここは川より少し高い位置にあるため、ここなら川全体を眺めるようにして釣りが出来るのだ。
竿先に疑似餌を仕掛けて、竿を振る。
それにしても…冬眠明けの熊か。
冬眠から明けたばかりの熊は、空腹により気性が荒くなる為 危険。それはかなり有名な話だった。
まぁでも普段から熊を警戒して、熊よけの鈴を準備はしていた。
とりあえずはそれで、なんとかなるだろう。
『!』
グッと竿が引っ張られる感覚。
すぐさま合わせる。すると、引きが明らかに重くなる。
こちらも力加減を調節して、魚と向き合う。
押したり引いたり。その繰り返しで、徐々に魚の体力を奪っていくのだ。
『…よし、一匹目…』
釣り糸を、川に垂らして。ぼーっとする時間が好きだった。
考え事をするにも最適だったし、気分転換にもなる。そして
キラキラと光る水面を見るだけでも、かなり癒される。
それにしても、
この日はいつになく、素晴らしい釣果だった。
なんだかそれが、私の中の不吉な予感を増幅させたのだった。
三時間ほど釣りして、バケツの中には四匹の魚。
今日はカカシは不在。二人分の晩御飯ならこれで十分だろう。
私は、その日食べ切れる分の魚しか釣らないよう決めていた。
従って、釣りはこれで終了だ。
私は後片付けを始める。同時に今日の夕飯のメニューを考える。
その時だった。
すぐ後ろの草陰から、ガサリと音がしたのだ。