第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
『バッテラくーん。釣竿貸して下さいな』
「またかよ…アンタいい加減自分の竿買えよな」
時間は流れ流れて。この国にも春が来た。
桜の花はまだ咲いてはいないものの、蕾はぷっくりと膨らんで。今にも咲きそうな物もいくつか見られる。
そんな小春日和。
私は休日に、マイブームの釣りに出かける為釣竿の調達に繰り出していた。
「だいたい、エリ釣りを覚えてからうちで魚買う頻度が減っただろ」困る
『いやいや、魚沼さんでは海魚を買わせてもらってるじゃない。さすがにマグロとかカツオは自分で釣れないから』
「当たり前だ!」ほら持ってけ
そう愚痴るバッテラだったが、丁寧にメンテした釣竿をいつも私の為に用意してくれてる。
『ありがとう!また綺麗にして返すね。
あ、そういえば。今日は女将さんは?』
「…俺に仕事押し付けといて、自分は友達と飯だとよ。まったく…良いご身分だぜ」
憎まれ口を叩いてはいるが、その顔はどこか嬉しそうだった。
『そっか!よかったね。バッテラ君が頑張ってるから、安心してお店任せてもらえてるんだよ』
「…エリのおかげで最近忙しいからな。アカデミーへの納品分だけで、かなりの売上だ。
俺も気合い入れないわけに、いかねーから」
『…ふふ、そうだよね!私に感謝したまえー』
「うるせー調子乗んな!!///」
そういえば…とバッテラが言う。
「川釣りするなら気を付けろよ。
冬眠明けの、熊が目撃されてる」