第22章 ※蝶と房事と、誘惑と忘却と
俺が目を覚ますと、彼女は既に起きていて。
忙しなく台所で働いていた。
『ヤバイヤバイ寝坊しちゃった!
サスケ君、ごめん朝ごはんおにぎり握ってあるから、それ食べてね』
「…アンタ、昨日あんなに飲んで潰れたくせに。
二日酔いとかはないのかよ」
『なくはないよ。頭が割れそうに痛いのと、食欲は全くないし。っていうか吐きそう』
「重症じゃねぇか…」
体がしんどいというのに、定刻より早く職場に向かわんとするプロ根性は、やはり彼女らしい。
『それよりサスケ君、昨日はごめんなさい。
せっかくご馳走してくれたのに…グダグダになっちゃって。今度リベンジさせてね』
「…別にかわないが。それなら、今度は」
サスケがちゃっかりデートの約束を取り付けようとしているところで、俺はやっとリビングへ足を踏み入れる決心がついた。
『あ、おはようございます。はたけさん』
「……おはよ」
彼女は、忌々しいくらいいつも通りの顔で俺に朝の挨拶を言ってのけた。
「っチ」
サスケの邪魔をした事で、コイツはコイツで機嫌が悪そうだった。
『あぁはたけさん!私もう行かないとなんで。
これ、食べて下さい』
「…あー、ありがとう」
見ると、朝ごはんの握り飯。それに律儀に弁当が二つテーブルに置かれていた。
「寝坊したのに弁当まで…」いいのに別に
『家事は私の仕事なので!』
「…そっか、ていうか君は朝から元気だねぇ。
何か良い事あったのかい」
『良い事…っていうか、昨夜はとても
良い夢 を見れました。
…それはもう、とても、幸せな』
彼女の言葉に、俺は咄嗟に顔を上げる。
「っ、それは……どんな、夢だったの?」
彼女は、極上の笑顔で俺に言った。
『秘密です』