第3章 猫と秋刀魚と、涙と笑顔と
この世界に来て、早いものでもう五日目になる。
カカシ達がよくしてくれるので、不便はしていない。しかし相変わらず私には、一人で外出をする許可は出されていない。
もちろんカカシが仕事から帰ってきた後、共に買い物には行くので、全く外に出してもらえないというわけではないのだが…
掃除や料理はむしろ好きだし、なにより二人の役に立てているのならそれは喜ばしい事だ。
しかしやはり毎日毎日同じ事の繰り返しではさすがに退屈してしまう。
『…退屈、か』
自分がこんな感情を抱くなど、元いた世界では絶対になかった事だろう。
向こうでは、ただ時間が流れるのを待った。
その時間が、例え私にとって苦痛であっても。そうでなくても。時が過ぎさえしてくれればどちらでもよかった。
ふと、窓の外に目をやると。
大きな樹木が見て取れる。そしてその樹木がつける葉は見事に紅葉していた。
私がいた世界とこの世界。確実に違う場所だが、巡り行く四季は同じようだ。
そう。季節は秋。
『今日は何か、秋らしい物を作ろうかな』
秋は食欲の秋と言うが。
秋は動物も冬に向けて栄養を蓄えて、丸々太る。作物だって旬を迎えるものが多い。これだけ食材が美味しく実るのだ。人間の食欲が増してしまうのを、誰が止められようか。