第3章 猫と秋刀魚と、涙と笑顔と
——point of view 八百屋の親父
八百屋を始めて長いが。最近とてつもなく嬉しい事が起きた。
若くて可愛い嬢ちゃんが、俺の仕入れる野菜を大層気に入って褒めちぎってくれた。
俺の目利きで仕入れる野菜は、そこいらの八百屋の物には絶対負けない自信があった。
でも、一見さんでそこまで見抜いてくれるなんて。なかなかある事じゃない。
努力してきた今までの苦労を、労ってもらえた
ような気がしたよ。
やっぱり俺も男だから。“美人”って付加価値にやられたのも事実だが…
それにしても、あの先生が女連れで買い物ってのにはかなり驚いた。もう三度くらいうちの野菜を買ってってくれたけど。
一体どういう関係なのかね…
恋人ってのには見えねぇんだよなぁ。どうしても。
カカシ先生が、嬢ちゃんに向ける瞳は、たしかに恋人を見るそれに近い気はする。
でも嬢ちゃんの方は…そうでもない感じだ。
多分ありゃ、先生の片思いだな。
いやそんな事よりも、嬢ちゃんを見てて気になってる事がある。それは…
彼女が、笑わない。事だ。
大好きな野菜を前にしても、先生や俺と話していても。くすりとも笑わない。
ったく。先生は何をやってんのかね。いくら腕っ節は強いか知らねぇが、男ってやつぁ、惚れた女を笑顔にしてなんぼだろ!!
しょうがないから、今度先生に会った時は 人生の先輩である俺がアドバイスしてやるか。
っと、噂をすれば。向こうから歩いてくるのはカカシ先生じゃないか?でも今日の連れは嬢ちゃんじゃなくてサスケかー。これは残念。
まぁ嬢ちゃんの話をするにあたっては、本人が居ない方が逆に好都合か!
俺はこちらに向かって歩いてくる先生達に向かって、大きく手を振って合図した。