第22章 ※蝶と房事と、誘惑と忘却と
「え」
「今日、会ってきましたよ。
正直…ガッカリでした。特別美人なわけでもないですし、なにより
すごく弱かった」
彼女のその言葉を聞いた瞬間、俺はアゲハの胸ぐらを掴んでベットに押し付けた。
「…エリに…何か、した?」
「あぁ…やっと、私を見てくれましたね。
これから、無視されるくらいなら…今みたいな冷たい目でも良い…
私を、見てくれるなら」
俺はアゲハをその場に残したまま、部屋を飛び出していた。
「……は、たけ、さん…どうして?
…どうして、私じゃ、駄目なんですか」
俺は走った。
とりあえずは、アゲハが確実に行ったであろう俺の家を目指した。
鍵を開けるのもまどろっこしくて、俺は玄関のドアを強引に足で蹴り開けた。
そして部屋の中を探し始めた。
リビングにはいない。次は寝室だ。
「……っ」
俺は思わず息を飲んだ。
寝室のあまりにも荒れた様子に、ただならぬ事がここで起こったのだと悟った。
しかし、血に塗れた彼女はそこにはいなかった。
じゃあどこに。
クソ。こんな事ならアゲハを捕まえて聞き出すべきだった。今からあの部屋に戻るか。
いや、自分の足で探し出した方が早いか。
珍しく俺の頭の中は、様々考えが交錯してパニック状態だった。
その時。さっき俺が半壊させた玄関が、ガチャリと開く音がした。
その音を認識した瞬間に、俺はすぐさま音のする方へ駆ける。