第22章 ※蝶と房事と、誘惑と忘却と
ヒュッと、私のすぐ真上を何かが高速で通り過ぎた。
それと同時に、私の上に乗っていたアゲハが飛び退いた。
私が体を起こすと、サスケとアゲハが互いに睨み合って静止していた。
『……サスケ、君』
「黒蝶アゲハ…。こいつに何をした」
「何もしてない…。まだ」
さきほど私の体の上を通り過ぎのは、どうやらサスケの蹴りだったらしい。
そんな事よりも、今のこの状況をどうしようか。
一触即発とはまさに今のこの状態を指す。
「お前がカカシ馬鹿なのは勝手だが。
エリには手を出すな」
「は?アンタごときが、あの人の事…いま馬鹿って言ったの?ねえ」
「いや、俺が馬鹿にしたのはおま」
「許さない…っ、クソ野郎がっ」
「…」駄目だコイツ
怒りを剥き出しにしたアゲハは、サスケに飛びかかった。
狭い部屋の中では、到底二人の激しい戦闘に耐えられるはずもなく。
家具は倒れて、ガラスにはヒビが入る。
「そんな雑な攻撃、そうは当たらないぞ」
サスケは言葉の通り、アゲハの攻撃をすんでのところで躱し続けていた。
「……」ふ
アゲハの微笑が、私を凄く不安にさせた。
私の嫌な予感は、次の瞬間的中する事になる。
「!!」
サスケの体が、急にガチっと凍ったように動かなくなってしまったのだった。
「…胡蝶の舞。体術に気を取られて、幻術への警戒を怠ったのが、アンタの敗因」
彼女は闇雲に攻撃を繰り返していたのではなく。
サスケに幻術をかける為に舞っていたのか。
「……っっ、」
サスケは体を動かそうと必死に身をよじるが、目は虚ろで術を破れるか危ういところだろう。
「…諦めろ」