第1章 死と異世界と、質問と銀髪と
今度こそハッキリと意識を取り戻して、ゆっくりと辺りを認識する。
どうやらほぼ間違いなくここは病院だと思われる。
次に自分の体の損傷を確認。痛みもなければ傷もない。まるっきりの無傷だ。
『………どうして。たしかに、私は…』
いや、おそらく今それを考えたとて無駄に終わるだろう。
それよりも私は辺りの観察を優先する。
簡素すぎる寝台。
コンクリートよりも木材を主として構成された病室。
自身の健康状態が忙しなく映し出されている精密機器。
そのどれを取っても、私が知る現代の医療機関よりも前時代的な印象を受ける。
「あ!気が付いたの。
どう?どこか痛いところはある?先生呼んでこようか?」
明るすぎるくらいの声を聞かせてくれた彼女は、格好から言って看護師で間違いないであろう。
『いえ…どこも痛くないです、
あと、先生も大丈夫ですから…』
「そう?じゃぁカカシ上忍、呼んでくるからちょっと待っててね」
ナースの口から聞きなれない言葉が飛び出す。
『カカシ…じょう、にん…?』
私は首を傾げる。
「そう。貴女を助けてくれた人の名前!
はたけカカシさんよ」
私が引っかかったのは、恩人の名ではなく 敬称の方だったのだが…べつに深くは追求すまい。
それよりも今私が気になっている事柄は他にある。それは、金銭面だ。
『あの、その前にお代を…
いま手持ちが2万円ほどしかないんですけど。それで足りますか?』
しかし、今度は彼女が首を傾げる番だった。
「……えん、って、何??」