第22章 ※蝶と房事と、誘惑と忘却と
「やはりこちらでしたか」
凛とした声に、私とミナトの時は同時に動き出す。
「…初音、だから頼むからもう空気を読んで」
溜息をつきながら、ミナトは初音に向き直る。
しかし初音はそんな叱咤も意に介さないようで、いつもの無表情なクールビューティ。
「私がもし空気を読めていれば、中崎様の貞操が危機でしたが」
『えっ』
「…エリが、俺の想いを本気と捉えてくれてないみたいだから。少しハッパをかけてみただけだよ」
ミナトがばちんとウィンクをこちらに飛ばす。
「と、いうわけだから。これからもまたちょくちょく煽りに来るから。
またね」
嵐のような人だ…
しかし、彼の行動力には恐れ入る。
そういえば、という言い方は失礼かもしれないが
彼は私と会ったその初日にプロポーズまでしてきたような人だ。
情熱的な人なのだろう。あの勢いはやはりナルトとよく似ている。いや、ナルトの方がミナトに似ているのだろうが。
でも、そうか…彼にもいつか、しっかりとした断りの言葉を伝えなければ。
ミナトは分かってくれるだろうか。
私がどれほど彼を傷付ける言葉を並べても、なぜだがミナトが私を諦めるビジョンが全くもって浮かばなかった。
『!』
その物音に気付いたのは、
本当にたまたまだった。
ミナトが帰ったばかりで、静けさに耳が慣れていなかったせいだろうか。
理由は分からないが、気付いてしまったのだ。
カカシの寝室に、誰かいる。