第22章 ※蝶と房事と、誘惑と忘却と
…くノ一限定。
この世界の事にさほど詳しくない私でも、その言葉の意味はなんとなく分かる。
『…忍の世界は、やっぱり私が考えるより厳しいものなんですね』
「やっぱり、くノ一にそういう手練手管、寝技のテクニックは必須だよ」
まだ未成年である女の子にまで、そういった技術を教え込む必要がある世界なのだ。
「まぁ実際、“そっち”が堪能だとね。生き残れる確率が上がるのも事実。
俺は、自分の里の人間は家族だと思ってる。
家族には、どんな事をしてでも生きて帰って来て欲しいと思うんだ」
『それは…激しく同意です』
ミナトは私の顔を覗き込む。その綺麗な青い目が私の心まで覗いている気がする。
「まだスッキリしてない顔だね。
そういう事を、カカシが教えてるって知って複雑なのかな?」
『…いえ。お仕事なら、致し方ないかと』
「君は、嘘を付くのが下手だね」
さっきまで目の前に座っていたミナトだったが、気がつくと自分のすぐ隣に立っていた。
私の瞬き程度の瞬間に、移動したらしい。
「もしかして…カカシと、もうそういう関係になっちゃった、のかな?」
『え…いえ、滅相もない、です』
彼はさらに私との距離を詰める。
綺麗な瞳の中に、このまま吸い込まれてしまいそう。
「じゃぁ、俺にしなよ。俺を選んで?
俺なら君にそんな思いさせないし、君以外の女性に触れたりしないのに」
『…ミナトさん自身が、はたけさんに個人授業を命令してるんじゃないんですか?』
「そうだよ。カカシは俺の命令には絶対に背かないからね」
『…なんて、悪い人』
鼻先と鼻先が、もう触れそうな距離。