第22章 ※蝶と房事と、誘惑と忘却と
私は、華氷の姿を頭の中で思い浮かべる。
『昨日お会いした女性も、
…とても、綺麗な人でしたよ』
「綺麗、か。まぁそうかな。まだ少し幼いけど」
『??幼い?』
彼女の姿は昨日見たばかりだ。とても幼いといった印象は受けなかったが。
どちらかというと、大人の色気を纏った上品なイメージ。
もしかすると、ミナトが思い描いている人物は華氷ではないのでは?
そう感じた私は、ミナトには悪いが。カマをかけてみる事にした。
『…彼女…名前は、なんと言うんでしょうね』
「あぁ、アゲハだよ。黒蝶アゲハ。昨日は名前聞かなかっ……」
ミナトは、私の顔を見て。分かりやすく、しまった!という表情を浮かべているのだった。
『へぇー…。私が昨日お会いしたのは、華氷さんという方なんですよねぇ』
「……あー、そういえば、初音が昨日何か言ってたな…。なんだったっけ…そうだ。
たしか報告書を華氷が自分のところに持ってきたけど、カカシの方に直接回すように言ったとかなんとか…
こんな事ならちゃんと話 聞いておけばよかった」
ミナトは普段、初音の報告を適当に聞き流しているのだろうか…。そう思うと、少し彼女が不憫だ。
『はたけさんは、本当に女性におモテになるんですねぇ。へぇ…
で、アゲハさんと言うのはどんな方なんです?』
「…お、俺が話したって事。カカシには内緒にしてくれるよね??」
『うーん、それはミナトさんが今から話して下さる内容次第ですかねぇ』
「ん、酷い…。でも狡猾な君も素敵だ!」
本人の口以外から、女性関係の話を仕入れてしまう事に。もちろん罪悪感がないわけではなかった。
しかし、それ以上にカカシの周りの女性関係が気になってしまったのだ。
それにおそらく、私がカカシに教えてくれと詰め寄ったところで。彼がすんなり教えてくれるとは思えなかったのだ。