第21章 イブとヤキモチと、報いと長期戦と
サスケの気持ちが、私に向いているのは 少し前から気付いていた。
それが確信に変わったのは、あの夜。
眠った私の額に、口付けを落とす。
心底、愛おしそうに。
そして縋った。
なぜ接触恐怖症が治ってしまったのか。と。
極め付けはあの言葉。
“ 俺から離れていかないでくれ ”
そして、苦しそうに言った。
ごめん。と。
彼は苦しんでいる。初めての想いに。
彼は恐れている。私が誰かの特別になるのを。
その気持ちが溢れてしまい、私に伝わった事は きっと彼自身も悟っただろう。
だからこそ彼は、謝罪の言葉を口にした。
好きになって “ ごめん ”
身勝手な言葉で縛って “ ごめん ”
縛った事に気付いているのに、解き放ってあげられなくて “ ごめん ”
きっとあの ごめん には、そんな沢山の意味が含まれていたのだろう。
しかし。本当に謝らなければいけないのは、私の方。
そもそも、彼にこんな辛い想いをさせるきっかけを作ったのは私なのだから。
多感な思春期の青年に、スキンシップと称して接触を図ったのが間違いだったのでは。
自分の障害を治すためにサスケを利用した報いを受けるべきなのは、私だ。
だから私は決めた。彼をこんなにも苦しめてしまうくらいならば、自分はこれから誰も選ばない。
誰のものにもならない。
「君が何を考えているのか、なんとなくは分かるよ」
私は、長い長い思考の中から顔を上げる。
「それが正解だとは、俺は思わないけどね」
『…何が正解か、なんて…私にも分からない』
「まぁとにかく、こりゃ長期戦だね。俺も焦らず行くとしますよ。
あ。言っとくけど俺、諦めは悪い方だから。
だから、エリもいつまでも逃げおおせると思わないでね」
『べ、別に逃げてるわけじゃありませんけど…
ふふ。でも、はたけさんに諦めてもらうのはすごく骨が折れそうですね』