第18章 狐と本能と、血と炎と
『…嫌なら、さすがにここまでしません』
正直な気持ちだった。私も、なんだかんだ心地良く思ってしまっている。
彼の温もり、匂い、安心感。
その全てが心地良かった。
「……保存本能って、知ってる?」
『え?』
唐突な質問をされたかと思うと、彼が私の上に乗った。驚く暇もないくらいの出来事。
ついつい質問に質問で返す。
『…指一本、動かないんじゃなかったんですか』
「はは。君の膝枕で、ちょっと回復したかな」
にんまりと半端な笑みを顔に貼り付け、カカシはその美しい指先で、私の唇をなぞった。その感覚に、肌がぞくりと泡立つ。
「で。保存本能っていうのはね、
生物が自己の種族を存続させようとする行動または原動力となるもの。
俺みたいに 危険な任務で命を奪ったり、奪われそうになったばかりの奴は…
特に危険だから。なんとか自分の種を残さないとって。本能が言ってる。
そんな俺に、同じベットに入るのが嫌じゃないなんて言ったのは…
君だからね?
今、生きているって…実感が欲しいんだ」
私の上のカカシが、見た事の無い顔をしている。ギラギラとした視線。少し荒い息遣い。
サスケが熱で浮かされた時のようだ。
カカシも自分で言っているように、任務で気分が高揚しているのだろうか。
その高揚を、誰かにぶつけないと彼は辛いのだろうか。
それならば、
『いいですよ…はたけさんが、したいようにして下さい』
私は目を瞑る。
「……」
するとすぐに、彼の顔が近付いてくる気配がした。
額に、彼の降ろされた髪がかすかに触れる。