第18章 狐と本能と、血と炎と
「…ん、よろしく」
怪我をしている上半身だけでも、なんとか清潔な衣服に着替えて欲しかったので。その返事が聞けて安心した。
しかし、大の大人を着替えさせる力は私にはなかった。カカシと力を合わせて、なんとか服を脱がせる事が出来た。
カカシの露わになった上半身を見ると、直近で見たサスケの体をどうしても思い出してしまう。
しかし、やはりその身体つきは大きく違う。
サスケのそれは、発展途上である青年期の、まるで陶器のような美しさがあったが。
やはりカカシの体は、ガッシリとした筋肉が体を覆っていて。大人の体だった。
『……///』
いや照れている場合ではなかった。
腕と、横腹に浅い裂傷。
私は桶の中の手拭いを使って患部の周りについた血を洗い流すように拭き取って行く。
傷は浅かったものの、決して少なくはない出血量で。手は簡単に震えてしまう。
「…ごめん。迷惑かけて。気持ち悪いよね。血なんて」
『気持ち悪くなんてありません。だって、はたけさんの血じゃないですか』
「!……、そっか…ありがとう」
彼の体には、いくつもの古傷があった。もちろん傷はとっくに塞がっていて、血などは出ていないが。見ていて痛々しい物である事に違いはなかった。
「…俺の体、傷だらけで、汚いでしょ」
『いえ。そんな事は思いません。ただ…
ここまでの傷を負ったなら、きっと何度も生死の境を彷徨ったのでしょうね…。
はたけさん。貴方が生きていてくれて、良かったです。
今も…こうして ちゃんと生きていてくれて、ありがとうございます』