第18章 狐と本能と、血と炎と
私が、むこうを向いているから。と言った理由は…
彼が素顔を晒す事に抵抗があるだろう、と考えたからだ。
しかし彼は軽く言ってのけた。
「ごめん…本当に、動けなくて…
お願いしても、いいかな」
彼の言葉の意味を思考する。
『…私が、飲ませる…という解釈で合ってますか?』
「合ってます」
私の膝の上に、乗っかっている狐の人がたしかにそう言った。
『分かりました…では』
私は何故だか、ひどく緊張した。
彼の素顔を、見る日が来たのかと思うと。
私は震えそうになる手を抑えて、彼の面に手をかける。
ゆっくり時間をかけている状況ではない。私は覚悟を決めて素早くそれを取り去る。
そこには
『………』
「ん?」
いつものマスク姿のカカシがいた。
『………っはぁー…、お面の下にマスクって…もう、ちょっとどうかしてますよ』
「えーそう?」
なんだか緊張していた自分が馬鹿みたいに思えて来た。私は二重マスクの彼の事をクスクスと笑いながら今度こそ彼の素顔を覆っている、口布を少しずつ下げた。
『…コップ持ってるので、ゆっくり飲んで下さいね』
「ありがとう」
彼の素顔は、私が兼ねてから予想していた容姿なんかより遥かに綺麗だった。
柔らかそうな、整った形の唇。それの左下にあるほくろがセクシーな雰囲気を醸し出していた。
それらを踏まえて、全体的にとても妖艶で、なぜだか悪魔のような美しさだと思った。
「…は、…ありがとう」
彼はコップを一気に空にすると、大きく息をはいた。
『あ、はい…じゃあ次は着替えさせても良いですか?』