第18章 狐と本能と、血と炎と
まるで夜店で売られているような、感情の無い白狐の面。
薄暗い部屋に浮かび上がるそれは、とても不気味で。驚きのあまり心臓が激しく動悸した。
『だ、っ…だ』
誰!と言いたいのだが。上手く声が喉から上がってきてくれない。
大声が出せない代わりに、薄暗い部屋の中 私は必死に狐の彼を観察した。
狐の面と、黒のタンクトップとズボンに、グレーのベスト。そして左腕には赤い紋様の刺青…。
それに加え、肩で息をしている事に気が付いた。それに血痕も見受けられる。どうやら怪我をしているようだ。
そして月明かりに照らされた髪は、キラキラと眩く光っていた。その美しい銀髪には見覚えがある。
『え…、!!は、はたけ、さん?』
その名前が頭をよぎった瞬間、呼んでいた。
「……ん、、せーかい」
久しぶりの、彼の間の抜けた声。
『だ…大丈夫ですか!?怪我、してます!?
ど、どうしよう病院…!でも私じゃ運べないし…
あぁ、凄いデジャブな感じ、、!』
「お、落ち着いて、ちょうだい。大丈夫…。だいじょーぶ…だから…」
大丈夫と言ってはいるが。ここまで満身創痍の彼を初めて見るので、気が動転してしまう。
『ど、どうしましょう…動けます?』
「いや実は、…ここまで帰ってくるのもギリギリで…もう指、一本動かせないよね…」
私は、勢いよくベットの上に飛び乗って彼の隣へ移動し、問い詰める。
『な、なんでそんな状態でここに帰ってきちゃったんですか!どうせ倒れ込むなら病院に駆け込んだ方が良かったのでは…』