第16章 桜と猪と、講義と欲求不満と
「なっ」
ガタリと音を立てて、立ち上がるイルカ。
恐らくは暴走した女生徒を止めようとしてくれたのだろうが。
私はそれを目で制した。
これくらいの妨害、予想の範疇です。と。
『講義の内容とかけ離れている質問ですが、答えておきます。
私ははたけ先生とお付き合いもしていないし、生徒に手を出した覚えもありません』
「でも、証拠写真も出回ってますけどぉ?じゃぁあれは何なんですかぁ?」
一番前の列に陣取る女性の受講生二人組。
どうやら彼女達はどうしても私が気に入らないらしい。私への攻撃態勢を緩める気配はない。
『…はたけ先生は、たまたま私に少し近付いただけです。そこを写真におさえられただけの事。
サスケ君との写真は、私が言って欲しくない事を彼が口にしそう
になったので、反射的に私が口を塞いでしまっただけに過ぎません』
「うーん、その言い訳ぇ 苦しくないですかぁ?」
「まぁいいですよ。じゃぁあの噂はどうなんですか?
二人と、同棲しているって」
サスケ達は、静かに事の成り行きを見守ってくれている。
講義が始まる前に、私が頼んだのだ。
講義中にどれだけ場が荒れようと、私のやり方でやるので。傍観してくれと。
『事実ですよ?同棲というか、同居している事は』
簡単に私が認めてしまった事で、教室内が明らかに騒めき立つ。
「や、やっぱり…」
「最低ーっ」
多くの女性から、予想通りの悲鳴が上がる。