第16章 桜と猪と、講義と欲求不満と
そして、あっという間に三日後。記念すべき初講義の日がやってきたのだった。
私の講義の時間までは、まだだいぶと余裕がある。念の為にかなり早く家を出たのだ。
そろそろ正門が見えてくる。
これからアカデミーに向かう者、帰る者が共に多く見られる。
どことなく、私に視線が集まっている気がする。おそらく気のせいではないだろう。
昨日のフミとのやり取りが、思い起こされる。あれが今、どう作用しているのか考えるだけで気が重い。
自分の中である程度覚悟していたのだが。
やはり大勢の他人から、好奇の目を向けられるのは正直辛い。
この、肌に突き刺さるような攻撃的な視線…
思い出したくもない事を思い出してしまう。
一瞬視線を下に向けたくなったが、私は意識して顔を上げる。
昔だって今だって、私は何も恥じる事などしていないのだから。
「よお」
『!!シカマル君』
そこには、予想していなかった人物の姿が。
『こんにちは。シカマル君』
「アンタ…呑気に挨拶してる場合じゃねェだろ。
なんか、大変な事になってんな」
『あー…うん。そうみたいだね』
私とシカマルは並んで、そのままアカデミーの正門を通過する。
「…見聞って奴の新聞が、割と前にばら撒かれたらしいぜ。
俺もチラっと内容見たけど…
アンタもうちょっと上手くやれよな」はぁ
『あはは、やっぱりそう思うよね。でもまぁいいんだ。
もう嘘はつかない事にした』
シカマルは呆れ顔だ。見なくても分かる。
「嘘付かないって…子供かよ。
大人はもっと要領よくやるもんだろ…」
『ところで、シカマル君はどうしてここに?』
「…アンタの講義受けろって母ちゃんがうるせーんだよ。
今時は男も料理覚えろだと」めんどくせぇ
…料理を覚えるのが目的ならば、次の講義の調理実習を選ぶべきだ。
自意識過剰かもしれないが、私を心配しての事ではないだろうか。
『…シカマル君、優しいね。
ごめんね。初対面の時、目が死んでるなんて思ってしまって』
「アンタやっぱりガキだなコラ!
言わなくていい事までベラベラ喋んのは子供の証拠だぜ?!」