第15章 見聞と新聞と、建前と本音と
おはようございます。と、少しだけ声を張って職員室へと入室する。
『イルカ先生、こんにちは。例のアレ…
もう出来てますか?』
「あぁこんにちは!来てますよー、ほら」
私はイルカのデスクに駆け寄る。
すると、彼は積み上げられた段ボールの一つを開封して見せてくれる。
『わ…凄い!出来てるー』
箱の中には、所狭しと出来上がったばかりの教本が詰められていた。
自分が監修した教科書が作られるというのは、やはり感慨深い物がある。
「いよいよ三日後ですもんね…
でも授業の予行演習も全く問題なかったですし!本番が楽しみですね」
『いやいや、これもイルカ先生のご指導のお陰です。ありがとうございました!』
「とんでもない。全てはエリ先生の努力の賜物ですよ!」
『え…えへへ。先生なんて…呼ばれるのは慣れていないので、なんだかこそばゆいですね』
「……っぅく///」かわっ
しかし実際、何度もイルカには模擬授業に付き合ってもらっていた。
初めは緊張もしたものの、前にいた会社でこなしていたプレゼンテーションと似たところも多く、今ではさほど緊張もしなくなった。
何が役に立つか、分からないものだ。
「そうだ…今日はもう出席カード 確認しましたか?」
『あ、今からです』
職員室前の廊下には、生徒が出席カードなる物を提出する木箱が設置されている。
そこには、私の講義に出席希望の受講者が 自分の名前を書いたカードを箱に提出する。
そのカードの枚数を確認する事で、私は自分の講義に出る生徒の数を把握できるのだ。
「エリ先生の場合は、週に一度の調理実習がありますから…それには食材の手配が伴うので、出席人数は出来るだけ小まめに知っておかないとですね」