第11章 鰹と抱擁と、仲直りと告白と
私達は、近くの演習場に来ていた。
そして、そこに用意されているベンチに二人で腰掛ける。
カカシは、私が落ち着くのをずっと隣で待っていてくれた。
「大丈夫?落ち着いた?」
『はい…お陰様で』
「目がだいぶ腫れちゃって」
私は、ふいに伸ばされた彼の指先を反射的に避ける。
「……えぇ、さっきまであんなに…、抱き合っても平気だったのに!?」
『さ、三歩進んで二歩下がるんです!』
そう簡単に、私の体が元に戻るわけはないと思い知らされた瞬間だった。
こういう病気は、根気よく戦っていく他無いのだろう。
「ま!仕方ないか。幸せだったからいいや」
カカシは、へらっと幸福そうな表情を浮かべた。
頭の後ろで手を組んで、背もたれに体を預ける。
『あ、あの…私も…幸せな人生を送る為に、
ひとつワガママ言っていいですか?』
「勿論。君はもう少しワガママになった方がいいって、前から思ってたぐらいだよ」
カカシの言う通り、私にワガママを言う事が許されるのなら…
どうか、どうかもう一度…。
『…あの、私、帰りたい…です。
はたけさんと、サスケ君がいるあの家に』
自分から、自立の為に家を出る。と飛び出しておきながら。こんな事を言うのは正直恥ずかしいけれど。
私はまた三人で暮らしたい。
私は、私が幸せだと思う方向に 自分から進んで行くと決めたから。
「…はは、うん。そうしてくれると助かる。
あんなところにもう置いとけない、っと。これはもうさっき言ったよね。
っていうか、こんなのはまぁ建前で…
俺が、ただ君と同じ家で過ごしたい だけなんだよね」