第11章 鰹と抱擁と、仲直りと告白と
あぁ。カカシとサスケのいる あの家に帰る事が出来るのだ。
それに、カカシが…
笑っている。いつもの優しい笑顔で。
ただそれだけの事だったが。私を心の底から安心させるには十分すぎた。
安心した途端、急激な眠気に襲われる。
それもそのはずだ。私は昨夜は一睡も出来ていなかった。
そんな状態で、今日も昼間は仕事で、大物の鰹を大量に捌いたのだから。
「…あのさ。最後に、君に聞いて欲しい話があるんだ」
私は、とん。とカカシの肩に自分の頭を預ける。
「!!……参、ったな。
こんなの、期待しちゃうじゃない。
ねぇエリ。俺、思ったんだけどね。
俺の幸せと、君の幸せ…
意外と近い所にあると思わない?
だからさ…一緒に探してみようよ。
ま、その、なんだ…平たく言うと…ね、
俺の恋人にな」
『ぐぅ』
「………
こんな事って、本当に起こるの?」現実?
なんだろう。
このふわふわした感じ。
なんだか涙が出るくらい懐かしい。
この感覚、この世界に来たばかりの時にもあったような気がする。
温かくて、まるで空を飛んでるみたいだ。
彼が大切な話をしている事や、まさかの寝落ちで思い切りカカシを傷付けていたなど露ほども知らず。
私は彼に抱かれて、家に帰る事が出来たのだった。
タイミングの悪い事に、玄関先で目を覚まして。
カカシに横抱きされている現状に驚きすぎて、馬鹿みたいに暴れてしまって。
地面に落ちてしまいそうになって。
玄関までわざわざ出迎えてくれたサスケも含めた 三人で本気で慌てて…
三人で笑って。
サスケが私に、おかえり。と言ってくれた。
私は勿論、ただいま。と返して。
二人には、おかえりなさい。しか言った事がなかった私だったが。
初めて言う、ただいま。が なんだかこそばゆくって。
私はまた笑ってしまったのだった。