第10章 仕事と自立と、喧嘩と鯛と
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「「魚屋?」」
『はい…商店街の中にある、魚沼という店です』
三人での食事を終えたあとに、早速例の件を話してみる。
「そういえば、あそこの主人最近見ないね」
『あ、なんでも、長期の漁に出られたそうで。帰ってこられるのは早くても一年後だそうです』
カカシは、一応は普通に言葉を返してくれているが。どことなくいつもよりも冷たいような気がする。私の気のせいかもしれないが…。
「それにしても、住み込みか…。おいカカシはどう思う?」
「んー…エリが自立の為に、ここを出たいって言うなら。俺達には止められないんじゃない?」
「…おいカカ」
『……あの!』
本当に、自分勝手な感情だと重々分かってはいるのだが…。カカシは…。彼は
私が住み込みで働く事を止めると思った。しかし、そんな事は全くなかった。
『お世話になりました…。魚沼はここから近いですし、たまに家事とか、お手伝いに来ますね』
駄目だ、泣きそう。
「…うん、よろしく頼むよ。元気でね」
「……」
カカシは、笑っていた。
いつもは和む笑顔だけれど。今だけは少し、心が重くなった。
『ふ、二人も元気で…!
魚沼の女将さんには、明日の朝からでも来て
欲しいと言われているので…
今日荷物をまとめて、明日の朝には ここを出ようと思います』
「明日の朝?!」
「うーん、ずいぶん急だね。俺は明日の朝早いからな…。
サスケ。明日の朝、仕事前に荷物持って送って行ってあげなさい」
お前に言われなくても、そうする!と答えたサスケの声が頭に響いていた。