第10章 仕事と自立と、喧嘩と鯛と
今日もみずみずしい野菜たちを、丁寧にカゴに入れ。その後は魚屋にむかう。
海老を買えば、本日の買い物は終了だ。
『そこの海老を三百グラム下さい』
「毎度!ちょっと待っててねー」
恰幅の良い女性が、海老を包んでくれている間 なんとなく辺りを見渡した。
なかなか大きい店だが、店員は女性一人しか見当たらない。切り盛りが大変そうだな。なんて呑気に考えていたのだが。
『!!』
私の視界に、一枚の張り紙が目に留まった。
「はいよおまたせー」
『あ、あの!これって、まだ募集してますか?』
“魚が捌ける人材、女性のみ一名募集”
しかも住み込みで、って…
まさに私の為の物件なのでは!
「あぁ、また人が辞めちゃってね。なにアンタ興味ある?ぜひお願いしたいよ!」
『興味あります!でも、一度持ち帰って家の者に相談してみますね』
なんと、願ったりかなったりである。
カカシの家からも近いので、家を出たあとも頻繁に家事の手伝いに行く事も出来る。
さらに食品に携われる仕事だ。やはり自分が興味を持っている分野なだけに、それだけでやる気も出る。
ひとつ気になるのは…
カカシと気まずい空気のままだと言う事。
果たしてこのタイミングで家を出ると言ったら、彼は…どう答えるだろうか。