第9章 命の使い道と、運命とプロポーズと
あぁ、参ったな。
俺はいま、人が恋に落ちる瞬間を見た。
『あっ…ごめん、なさい。私なんかが火影様に偉そうな事言ってしまって。
こないだまで、自殺を考えていたような人間なのに…本当に』
「………」
ミナトは、まだ彼女の目を馬鹿みたいに見つめている。言葉を発する余裕はまだなさそうだ。
それくらい、衝撃的だったのだろう。
『は、はたけさん。あの、どうしましょう。火影様固まってます…。とてつもないくらい怒らせてしまったのでは…』あせあせ
「……はぁ。君は、本当に…何も分かってない」
そう。彼女の言葉は、人の心の中核を的確に抉る。
そして、その傷に気付いた時には…
「いや…、ありがとう。なんだか俺、感動しちゃった。
君の言葉は、ひどく心に響くね」
彼女の虜になっているんだ。
…俺にサスケに、イルカに続いてまさかミナトまで。
エリの特技は、男を落とす事だとでもいうのだろうか。
「…いやー、効いた効いた!強烈だねー君のパンチ」
『え!私、その…殴ってはない、です』
申し訳なさそうに、体の前で揉み手している。
「あはは、分かってるよ。ごめんね、こっちの話」
誰もかもが吸い込まれそうになる青い瞳で、穏やかに微笑むミナト。
俺はこの空気を壊したくて、話を本題に戻す。
「それで…エリを口寄せしたってのは、本当なんですか」
「本当だって。それに、この件は君も知ってるはずでしょうに」
「…はい?」
「カカシ、覚えてないの?
ほら、…あれは三ヶ月くらい前だったかな?」