第9章 命の使い道と、運命とプロポーズと
「それで」
カカシが真剣な表情で話しを切り替える。
「先生、本当なんでしょうね?エリがどうしてこの世界に来る事になったのかを、知ってるってのは…」
「ん!勿論だよ。だって、彼女をここに呼んだの、俺なのさ」
俺なのさ…
俺なのさ…
頭の中で、彼の言葉が反響反芻。
「どういう事ですか、それ」
カカシのいやに真剣な声も、頭に響いた。
「そういう事だよ。俺が彼女をここに口寄せした」
「口寄せって…あんたそんな勝手な」
二人が、私の話をしているというのに。
どことなく他人事のように感じていた。
ふと、部屋の中への視線を泳がせる。
『…そこの写真…。ミナトさんと写ってる、赤髪の女性…亡くなったんですか』
ツヤツヤ黒光りする、立派な仏壇。そこにあった写真立てに彼女は写っていた。
「…あぁ、うん。彼女はクシナといってね。俺の奥さんだったんだよ」
…だった。過去形のそれが、悲しく耳に響く。
「里を守る為にね…亡くなっちゃったんだよ。
本当は、その役目は里の長である、俺のものだったのにね…」
ミナトの長い睫毛が、頬に薄く影を落とした。
『役目って…役目ってなんですか』
話の流れをぶった切ってまで質問した私に。丁寧に答えてくれたミナト。
しかし私の声は、確実に怒気を孕んでいた。ふつふつと湧き上がる怒りを抑えきれなかった。
それにいち早く気付いたカカシが、私の名を呼んだが。そんな事はどうでもよかった。
『死ぬ役目って事ですか?自分が、奥様の代わりに死んだ方がよかったって事ですか?
そんな事を、いまミナトさんが考えているって奥様が知ったら…
どんな気持ちになるか、って。考えないんですか?』