第8章 鹿とたんぽぽと、デートとご褒美と
シカマルは、ミナトの事を安全と判断したから、私との外出を許可したのだろう。
でも…
もし仮に、彼もミナトとグルなのだとしたら。
実はシカマル自体、カカシが用意した見張りではなくて…
ミナトが用意した仲間だとしたら。
最初から、私がミナトに付いて行くように仕向けられていたとしたら。
「うわヤバ!ちょっと隠れて!」
『なっ!?』
深い思考の底から、急に現実に引き戻される。
彼に腕を引かれるようにして、私達は狭い路地裏へと身を潜める。
ミナトの体に触れないように私は出来るだけ距離を取る。
『私たち今何から隠れてるんですか…』
「ほら見て、カカシがそこに」
『え』
私は促されるがまま、路地裏から大通りを覗く。
ちょうど、さっきまで私とミナトが歩いていた辺りに、カカシが確かにいた。
そして何かを探すように、きょろきょろと周りに気を配っている。
「君を、探してるのかもね」
どうして、ミナトはここまでカカシに見つかる事を危惧しているのだろうか。
仮に、本当に二人が敵対関係ではないのであればカカシに会う事など全く問題ないはずなのに。
私の心臓は鼓動のスピードを加速させた。
自分の中で渦巻いていた黒い不安。それが明確な物となっていく。
やはり、ミナトとカカシは敵同士なのでは?
そうこう私が長考している間に。
あぁ、どんどんカカシの背中が遠ざかる。
もうグダグダ考えている時間はない。
『はたけさんっ!』
私は路地裏から飛び出した。そして懸命に地面を蹴る。走る。あの背中へ向かって。
「!」
私に名前を呼ばれて、こちらを向いたカカシ。
その胸に、思わず飛び込む。
「……え…、え!?エリ!?
よ、良かった…その、俺、探してて…
ていうか、な、なに、この急に与えられたご褒美展開…いいの、いいの?」
なにやらパニックで独りごちているカカシ。
私の背中に腕を回そうか どうしようか、と。
手を出しては引っ込め、また出しては引っ込めと慌てふためいている。