第8章 鹿とたんぽぽと、デートとご褒美と
「さーて、そろそろ出ようか」
二人揃って茶店を出る。またご馳走になってしまった…。
全く知らない人に、ご飯を奢らせ、プレゼントを貰い。お茶代も出させてしまった。
これはもう本当に何かお礼をしないといけない。
ミナトとカカシが知り合いなのは、もう確実なものとなった。
ならばカカシに聞けば、彼の素性は割れるだろう。お礼はそれからにしよう。
『ご馳走様です。今日は本当にありがとうございました』
「ん?まだ帰さないよ?今から俺の詰所に行くから」
『…………』
“エリちゃん、
知らない人にお菓子をもらっちゃ駄目。絶対に付いて行ってはいけないよ”
『はっっ!?』
驚きのあまり、だいぶ昔の記憶が蘇ってしまったではないか。
あちらの世界では子供の頃、誰もが言われた事のある有名な注意喚起だろう。
「君がどうしてこの世界に来たのか、知りたくない?」
『……』
人は、本気で驚くと声は出ない。
「そんなに固くならなくても、別に密室で何かしようってわけじゃないからさ。安心してよ。
一緒に来れば、全部教えてあげる。
大丈夫。何も怖い事なんてないよ」
知りたい。この人が、私の事をどこまで知っているのか。
私がこの世界に来た理由。
私は、本当にこれが正しい選択なのかどうか考えながらも、一歩踏み出した。
歩きながら、必死で頭の中を回転させる。
色々と考えてはいるが、私が今一番知りたい答えはやはり…
本当にミナトは、危険な人物ではないのだろうかという事だ。