第1章 死と異世界と、質問と銀髪と
『…ここは、』
そこには、初めて見る木目の天井が広がっていた。
病院のものではない。
私が上半身を起こすと、水気をたっぷりと含んだタオルがベシャリと頭からずれ落ちた。
「おはよう」
『…おはようございます』
このやり取りももう二度目だ。
「もう夜だ。ウスラトンカチ」
さきほどと違うのは、ここが病院ではないこと。
そしてサスケと呼ばれる青年の辛辣なツッコミがあること。くらいだろうか。
この青年には、病院で恥ずかしいところを見られてしまった。
腕を掴んだくらいであれだけ騒がれて暴れられて…。さぞ驚かせてしまったことだろう。
それにしても…彼の顔は、整った造形をしていると思う。
年は…こちらの基準で無理やり当てはめてしまえば、高校生くらいになるだろうか。
「おい」
『は、はい』
じろじろと見られ続けた事に、我慢の限界を迎えたのか。
生意気そうな目を釣り上げて、私に威圧的な声を投げる。
「アンタ、本当に木ノ葉に侵入した他国の間者。ってわけじゃないんだろうな?」
木ノ葉。というのは、この国のこの里の名称だ。
今日テレビで仕入れたばかりの、ほやほやの情報だが。
『…違うよ?』
「あー、ごめんね。こいつ口悪くて…。
思った事全部ぺろっと言っちゃうタイプで。
一応間者なんかじゃないって、君が寝ている間に伝えたんだけど。
ま!改めて紹介しとくよ。こいつはうちは サスケ。
俺の元でいま修行中でね。ここに居候させてる。
ちなみにここは、俺の家」
「……」
サスケ、と紹介された彼は
よろしく、とか。どうもー、とか。
そういう言葉で、場を和ませる気は一切ないようである。
じぃ、と。私の目をただただ見つめた。