第1章 星降る夜になったら
「へ、変なこととか書いてなかったですか…?」
「変わってるとは思ったが。」
「え?!どこがですか?!」
焦りながら問う私に、リヴァイさんは冷静に答えてくれた。のだが、
「ベースの弦になりたいです、なんて書くか?普通。」
「ハッ…!」
確かに書いたそんなこと…
あの時は熱が入ってたから気付かなかったけれど、冷静に考えたら無茶苦茶痛いこと書いてるじゃん…
「本当にベースを弾く姿が素敵なので…」
もう、そう返すのが精一杯だった。
あの言葉にはリヴァイさんに触れたい、触れて欲しい、という密かな願望を込めていたのだけれど…
最初から絶対に叶わない事だと分かっているからそんなことを言えるわけで、それをまさか本人に突っ込まれることになるなんて…
「ありがとな。」
「!」
焦る私を前に、フッと笑う横顔。
いつも仏頂面のリヴァイさんが笑ってる…
「喜んで頂けて嬉しいです…」
ただほんの微かに微笑んだだけ。
それだけのことなのに鼓動は勝手に高鳴ってしまう。
私は意を決して投げかけた。
「あの…」
「なんだ。」
「どうして私なんかを…お誘いくださったのですか?」
核心とも言える質問だったからすごく緊張して、語尾が無駄に丁寧語になってしまったが、またも少々的がズレたような答えが返ってきた。
「お前がライブに来なかったからだ。」
「へ?!」
ちょっと意味がよく、分からないんですが…
「何て間抜けな声だ…そりゃぁ」
「あの…私がライブに行けなかったのはあまり関係ないような気がするんですけど…」
「馬鹿言え、大有りだ。」
「えぅ…」
横目でギロりと睨まれる。
口ごたえして怒らせてしまったかと怯みそうになったけれど、リヴァイさんはすぐに前を向いて、また感情の読めない声で続けた。
「こうでもしないと捕まえられねぇだろ。」
「!」
放たれた言葉に、今度は間抜けな声すらも出なかった。
捕まえられない?私を?
何故捕まえる必要が…?
どういうこと……?!
瞬時に頭の中は疑問符でいっぱいになったが、その真意を確かめるのはなんだか怖い。どれもとても言葉にすることはできなかった。
私は固まったまま何も言えなくなってしまった。そしてリヴァイさんもまた、それ以上何も言うことはなかった。