第1章 星降る夜になったら
「…リヴァイさん」
エマを見つめるリヴァイの瞳は、今まで見たことがないくらい優しい色をしていた。
そんな彼にエマは少し申し訳なさそうに眉根を寄せる。
「あの…何も用意できてなくて申し訳ないんですけど、気持ちだけ、伝えてもいいですか?」
「…お前の気持ちならもう聞かせてもらったが?」
そう言いつつも、まだ何か言うことがあるのだろうかとリヴァイは続く言葉を待った。
「お誕生日、おめでとうございます。」
太陽のような笑みを向けるエマに、リヴァイは目を丸くする。
「ほら!実は結構前に過ぎちゃってましたけど…」
そう言いながらエマは腕時計の文字盤を見せた。
「あれ、まさか…忘れてました?」
「…あぁ、まったく。」
「フフフ…一番にお祝いできてよかった。」
“やっぱりまだ信じられないですけど…”と良いながら嬉しそうに笑みを零すエマ。
たった一人からの祝福の言葉がこんなに胸をいっぱいにするなんて、そんなこと知りもしなかった。
照れながら言う目の前の彼女に、愛おしい想いが溢れ出す。
「エマ。」
名前を呼ぶと、小さく首を傾げながらこちらを向く。
「ありがとな。それと…」
その頬を両手でそっと包み込み、引き寄せる。
「未だに夢だと思うなら、お前が信じられるようになるまで何度でも分からせてやるよ。」
「えっ?リヴァっ!!」
揺れる瞳を捕らえて離さない。
戸惑う口を塞いで、自身の温度と感触をエマの身体に染みこませるように何度も唇を合わせ、溢れる想いを注ぎ込むように深く深く舌を絡めて混ざり合った。
冷えた空気に包まれた静寂の中、その一箇所だけが甘い熱を持つ。
何度も何度も、たった今手にしたばかりの温もりを確かめるように抱き合い、口付けを交わし、愛を囁き合う。
二人のことは、無数の煌めきが降り注ぐこの夜空以外、誰も知らない。
fin.