第1章 星降る夜になったら
いいのだろうか…本当に。
この思いをぶつけてしまっても、いいのだろうか。
「リヴァイさん、私っ…ずっと好きで好きでたまりませんでした。痛いけど、ファンじゃなくて一人の女として見て貰えたら、って考えたことだって何度もあるんです…」
繋いだ手に自然と力がこもる。
目には涙が溜まり声は勝手に震えていた。
「私も…今日だけじゃなくて、許されるならこれから先もずっとリヴァイさんと一緒にいたいです。
一人の女として、リヴァイさんの傍にいさせてほ」
思いの丈を伝えきる前に触れた温度。
冷たい空気に晒されて冷えた柔らかさが、エマの口を塞ぐように重なった。
ーまるで時が止まったかのようー
とは、こういう時のことを言うのだろうか…
筋肉も呼吸も、全身を巡る血液も、星の瞬きも、漂う空気も、何もかも全てが静止してしまったようだった。
「エマ。」
落ち着いた声で、初めて名前を呼ばれる。
たったそれだけで心臓は痛いくらいに高鳴り、静止していた世界が再びゆっくり動き出す。
エマを見つめていた視線はゆっくりと前を向きながら、静かに語る。
「ずっとお前を見てた。お前の顔が見れるのが楽しみでしかたなかった。
自分でもおかしいんじゃねぇかと思った。大勢の客の中からたまたま見つけた奴にここまで固執しちまうなんてな。
でもお前があのカウンターにいると、全然違ぇんだよ。見える景色も、聞こえる音も、漂う空気さえもな。」
「…………」
「だから今日、姿がなくて正直焦った。毎回欠かさず居たのに今日はいねぇ。世の恋人共が浮かれてるこの日に来ないってことは、そういうことなのかと思ってな。
たまたまライブ中見つけられなかっただけでどっかにいやがるんしゃねぇかと、諦めきれずに帰り際も探した。そしたら見つかって、気がついたら手を引いちまったんだ。
こんなことするなんて自分でも驚いたんだが…
けどな、その時確信した。
ライブに来ようが来てなかろうがもうそんなのは俺にとっちゃ関係なくて、ただお前に会いたかっただけだと…」
「…………」
聞こえる声は本当に現実のものなのだろうか…
目の前にいる愛しき人は、本当に幻ではないのだろうか…
「こうしてお前を独り占めしたかっただけなんだとな。」