第1章 星降る夜になったら
「……リ、バイさ」
こんなのって、こんなのって、
「夢……じゃないんですよね…」
はらはらと頬を流れる涙を拭うことすら忘れてしまう。
「そんなに信じられねぇか?」
「っ……だって、こんな奇跡みたいなこ」
また全部言わせてはくれなかった。
腰を引き寄せられ掌を頭に添えられて、今度は先の触れるだけのとは違う、甘くて深いキスが降り注いだ。
開いたままの目に飛び込んだのは、閉じられた瞼。
口の中に入ってきた舌は想像以上に熱く、周りの冷えた温度と対照的すぎてそこだけ切り取られたように意識が集中してしまう。
鼻先、唇、舌、胸、背中、腰、腕、手のひら、触れ合う部分全てが甘くて切ない熱を帯びる。
この温度は、間違いなく…
「これでも夢だと思うか?」
「……夢、なんかじゃ、ないです」
リヴァイの胸に収まったままポツリと呟けば、冷たい指先が顎に添えられ、もう一度上を向かされる。
「エマ、好きだ…」
「私も好きです…リヴァイ、さん」
再び唇に吸い付かれ、舌を侵入させられる。
その甘ったるい口づけに膝の力が抜けてしまいそうになる。
シンと静まり返った静寂の中、合わさった水音と息を吐く音だけが鼓膜を支配して脳が蕩けそうだった。
それでもリヴァイとのキスを止めたくなくて、絡みつく舌に夢中で舌を絡ませた。
漸く唇が離れて、また問われる。
「エマ…先に言っておくが俺は独占欲が強い。一度手にしたら二度と離すつもりなんてねぇが…それでもいいか?」
そんなの…そんなの全然問題じゃない。
「むしろ…たくさん独り占めして欲しいです、私のこと…」
精一杯自分の気持ちを伝えると、小ぶりな唇が薄く弧を描いた。
「そうか、なら遠慮無くそうさせてもらう。」
「はい。」
見上げると自然とどちらからともなく頬が緩み、そして大きな手がふわりとエマの頭に乗って、さらさらと髪を撫でた。