第1章 星降る夜になったら
「ここは…」
静寂を破ったのはリヴァイだった。
「誰も来ない。俺しか知らない場所だ。」
「秘密の場所…ですか…
すごく素敵なところですね。都会の中にもこんなに静かでこんなに星が見える場所があるなんて…」
「探せばある…まぁここは偶然見つけたんだがな。冬は空気が澄むから星もよく見えるし、今日は絶好の天体観測日和だ。」
「本当に綺麗です。星空全部独り占めって感じですね。」
「独り占めか…そうだな。ここに来るとクソみてぇに嫌なことがあってもこうして眺めてる間は忘れられるし、心を無にするにはうってつけだ。」
「…リヴァイさんって、意外とロマンチストなんですね。」
「おい…意外と、が余計じゃねぇか?」
「フフ、すみません。でもロマンチストなリヴァイさんも素敵です。」
「…そうか」
「はい」
さっきよりも自然と話すことができている。
この空を一緒に見たからだろうか。二人の間を流れる空気が何か、変化したのだろうか…
あれだけガチガチに緊張していたのも、気が付けばだいぶ解れていた。
また空を見ると、視線の先に一瞬だけ弧を描く光を捉えた。
「あっ!流れ星!!」
リヴァイが弾んだ声の方をチラリと見ると、目をキラキラさせている横顔があった。
「流れたな。」
「わぁ…久しぶりに見ました。流れ星って流れてるうちに3回願い事唱えられたら、叶うんでしたよね?」
「確かそうだが。」
「また流れないかなぁ…」
エマは瞳を輝かせたまま、期待を込めた表情で真剣に空を見つめている。
何か願い事をするつもりなのかと聞けば、照れくさそうに笑う顔が星灯にぼんやりと浮かび上がる。
「えへへ、はい。でもあんな一瞬じゃさすがに難しいですかね。」
眉を下げて少し残念そうに呟く彼女を見たあと、また上を見た。すると、
「おい…そうでもねぇかもしれんぞ。」
「え?……わ!これって…」
キラキラと瞬く星の間を流れ落ちる、光。
それはポツ、ポツ、なんて量ではない。
まるで夜空が無数の光の線で埋め尽くされていくかのように、それは次から次へと駆けていく。
「流星群だ…願うなら今のうちかもな。」
「あっ、はいっ!」
その言葉にエマは慌てて返事をすると、真剣な顔で手を合わせて指を絡め、目を瞑った。