第1章 情報屋X
この様子だと零は
私の事を信頼どころか
警戒し続けるだろう…
作戦は変更。
情報を出し
惜しみしている場合じゃない
先に組織の問題を解決して
それから過去の修復をしよう
私が集めた組織の情報。
組織の全て。
私はただ零の為に
ここまでして来たんだ
あの時、零を突き放してまで…
全部、零の為。
だが一体、
この組織の情報は誰に託せばいいのか
そうね、結論は決まっているわ
あの彼女に渡すべきよ
大丈夫、彼女なら
この情報をあのFBIの彼に渡してくれる
そうすればFBIから零の元へ…。
私は喫茶店ポアロから
彼女が出て来るのを待った
タバコに火を付け思考を巡らせる
計画通りに事が運べば
組織は壊滅…
煙を肺に送り吐き出す
その時ポアロから
彼女と少年が出て来た
残念そうな顔をしている彼女を見て
零はXの事を話さなかったのだと
理解した
私と彼女を遠ざけたいのだろう…
あのFBIとの間で
彼女を危険に晒さないと
約束でも交わしたか…
だがそんな事どうでもいい
私が持つ情報は彼女の元へ渡す
遠くの方で彼女と少年が別れたのを
確認してタバコの火を消し
彼女へ近づいた
よそ見をしながら
こちらへ歩いて来る彼女に
わざとぶつかる
彼女「ごめんなさいっ!
ちゃんと前を向いてなくて…!」
『大丈夫、
ぶつかったのはわざとよ』
彼女「えっ…?」
困惑する彼女が小動物の様に思えた
零は可愛らしい子に恋をしたのね…
『私は貴女が
一生懸命探している情報屋Xよ』
目を丸くしながら
私を見つめる彼女に
ふっ…と微笑んだ
私はポケットから
今滞在しているホテルの住所を
書いたメモ書きを取り出して
彼女に渡した
『今度ここへいらっしゃい
私が滞在しているホテルよ』
彼女はメモ書きを受け取った
近々FBIと公安の会議が開かれる
その時ならあのFBIが
彼女を監視する事が出来ない
その日、彼女なら
私の元へやって来れるはず
私は困惑する彼女を残し
その場を立ち去った
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